オオルリシジミは、長野県の一部と熊本県の一部にしか生息が確認されていない絶滅危惧種のチョウです。成虫は5月~6月に出現し、卵、幼虫期を経て7月から約10カ月間は蛹(さなぎ)として過ごします。幼虫期はクララ(マメ科)の花と蕾しか食べません。
かつてオオルリシジミは、人が暮らす里山で生息していましたが現在里山環境が失われつつあり、それと共にオオルリシジミの数が減ってきています。
国営アルプスあづみの公園では、オオルリシジミとその生息地の保全活動を推進し、失われつつある里山の生態を地元の皆様と一緒に取り戻そうと活動しています。
※写真(左)オス、(右)メス、(下)オオルリシジミの卵
『オオルリシジミ』(本州亜種)
Shijimiaeoides divinus barine
◇昆虫綱 チョウ目 シジミチョウ
◇分布:本州
◇ランク:
環境省/絶滅危惧IA類(CR)
長野県/絶滅危惧IB類(EX)
※アルプスあづみの公園では、成虫は5月中旬~6月上旬に出現します。
園内では、「里山文化ゾーンのサンクチュアリ(生息地保全)※」と「田園文化ゾーンの池周辺」にオオルリシジミの幼虫が食べるクララを植栽しており、オオルリシジミもよく見られます。
※「里山文化ゾーンのサンクチュアリ(生息地保全)」は、通常は立入禁止エリアとして、昔から自生している動植物を保護育成しています。
毎年3月に野焼きを行い、生物保全のための草地の管理を行っています。
毎年3月中旬に里山文化ゾーンのサンクチュアリ(オオルリシジミ保護区)では、野焼きを行います。
野焼きを行うことで、オオルリシジミの卵に寄生するハチ(メアカタマゴバチ)を駆除する効果があることが、研究者のサンクチュアリ調査で明らかになりました。
3月に入ると安曇野では田畑の畦の野焼きが盛んに行われて来ました。昔から害虫駆除のために行われていた野焼きが、安曇野のオオルリシジミを守って来たことがわかりました。公園でも周辺地域の風習に併せて春先に野焼きを行っています。
ちなみに、野焼きをすることで、サナギは焼けてしまわないかと心配ですが、オオルリシジミのサナギは石の下に潜り込んでいるため、地表の枯れ草を焼いても影響を受けずに、例年5月中旬から羽化して地表にはい出てきます。
マメ科 (学名Sophora flavescens) 多年草
クララはオオルリシジミの食草(産卵する植物)で、幼虫が食物にする部分は蕾に限られています。
チョウは蕾に1個ずつ産卵して行きます。オオルリシジミはクララがないと生きて行けません。
クララは水洗便所が普及する以前には、トイレのウジゴロシとして刈り取った茎葉が使用されていました。タンニンを含むことから口にすると、とても苦く、頭がくらくらする「眩む草」の名前が転訛して、クララとなったといわれています。農地改良や水洗トイレの普及が田園の生活にクララを残す必要性が薄れて行き、オオルリシジミの生息地が激減してしまったと推測されています。
※牧野新植物図鑑
属名のSophoraはアラビア語のマメ科の植物名に由来することから、マメ科の意。
種小名のflavescensは黄色っぽくなることの意。(花の色が白から黄ばんで行く様子)
国営アルプスあづみの公園では、「オオルリシジミの観察会」や、「サナギを放そう!」などのイベントを開催し、保全活動、啓発活動を行っています。
オオルリシジミについて学び、保全活動に参加してみませんか。
各イベントの開催詳細につきましては、決まり次第ホームページでご案内いたします。
地元の保護団体(安曇野オオルリシジミ保護対策会議)メンバーによるオオルリシジミの飼育活動が長年続けられています。国営アルプスあづみの公園が開園した翌年(平成17年)から毎年こどもの日には、園内のクララ植栽ゾーン(田園文化ゾーン池周辺)で、飼育したサナギを放す参加型イベントが行われています。
未だ、自然発生の状態にはなっていませんが、チョウをまじかに観察できる機会を園内で提供しています。
オオルリシジミがチョウになる最盛期には、普段公開されていないサンンクチャリ(保護区)の敷地で、チョウの観察会と産卵調査を研究者と一緒に実施しています。(平成30年から)
オオルリシジミがサンクチャリから公園内の他の場所で自然発生することを期待して、食草クララの株を参加者と一緒に植えるイベントを実施しています。
今後、公園内外の箇所で自然発生が増えることは、絶滅の危険を分散することとなり、保護活動の次なる目標となっています。
オオルリシジミの一生を記録した短編映画「あづみの・ちいさな命」をあづみの学校観覧室で上映しています。