安曇野の自然
安曇野のシンボル常念岳
「日本・近代登山の父」「日本アルプスの開拓者」として知られる英国人登山家ウォルター・ウェストンに「松本附近から仰ぐすべての峰の中で、常念岳の優雅な三角形ほど、見る者に印象を与えるものはない」といわしめた常念岳。その美しい姿を安曇野のどこからでも仰ぎ見ることができる常念岳は、地域の人々にとって故郷のシンボルであり、その雪形(※)は季節の変化を里に知らせる暦でもありました。
毎年、里が新緑の季節を迎える4月下旬、常念岳には僧衣を着た坊さん“常念坊”のやや前かがみで托鉢する雪形が残雪の間に現れます。常念坊の出現時期によって、かつての安曇野人は田植などの農事期の目安としていました。長い厳しい冬をじっと過ごした農家の人は、この季節を迎えると「常念坊が出てきたね」と挨拶をかわし、暖かい季節の訪れを喜び合ったといわれています。
※雪解けとともに現れる山肌と残雪とが織りなす美しい自然の造形のこと
清冽な湧水
安曇野は、北アルプス連山を水源とする烏川や穂高川、中房川、乳川など、いく筋もの川が運び込んだ土砂が堆積した扇状地に広がる田園地帯です。扇状地に堆積した土砂は地下に水を浸透させやすく、北アルプスの雪解け水の多くが、扇状地の入り口(標高800m付近)で地下にもぐり、約半年後に扇状地の末端(標高500m付近)で湧き出す水流をつくり出しています。
地下で天然ろ過され、透明度の高い清水となって地表に現れる湧水が、安曇野自慢のひとつであるワサビを育み、水と緑が織りなす美しい景色を生み出しています。この湧水地帯は、「安曇野ワサビ田湧水群」として、昭和60年に国の「名水百選」のひとつに選定、平成7年3月には「水の郷」に認定されています。厚生労働省の「おいしい水の条件」をことごとく満たした優れた水質と、日量70万トンという豊富な湧出量を誇る湧水は、ワサビ栽培、ニジマス養殖にと、特色ある地域産業の形成に大きな役割を果たしています。
安曇野のワサビは、湧水利用であることから全国でも珍しい平地栽培で気候に寒暖の差があることから、辛みが強いといわれ、年間生産量は日本一を誇っています。